千代田化工建設株式会社は、プラント建設に特化した建設会社。主力はLNG(液化天 然ガス)プラントだ。LNG や石油のエネルギーや化学分野のプラントを、日本はもとよ り海外のさまざまな地域で展開している。カタール、サウジアラビアの中東地域や南洋 地域から、最近では北米地域でシェールガスのプラント建設も行っている。
プラント建設会社は、EPC(Engineering, Procurement, Construction)と呼ぶ現場 調査・設計、部材の調達、建設の一気通貫した業務を行っている。このため、同社のIT インフラは、設計図のCAD データ、ドキュメント、各種エビデンスからプロジェクト進 捗管理まで、全てのデータを保管しておく必要がある。プロジェクトによっては10 年 以上の保管が要求されるものもある。千代田化工建設にとってデータは要であり、その バックアップはビジネス上、非常に重要だ。
千代田化工建設では、これまでオンプレミスでサーバが大規模に存在する環境であった が、基盤のサイロ化が課題となり、その解決方法として、2015 年秋頃に統合基盤の検 討を開始。2016 年春にデータセンターにサーバを統合し、この統合仮想化基盤に移行 していった。一方で、グローバルでビジネスを展開する同社にとって、各支所からのIT サービスの活用をより高パフォーマンスかつ高セキュリティで実施していく観点で、パ ブリッククラウドの利用を開始した。現在は、サーバ全体で数百台、うち約半数を仮想 化している。
石野氏は、「統合仮想化基盤のバックアップには以前は他社製品を採用していたが、こ れが当社のバックエンドインフラチームに相当な負担をかけてしまった」と振り返る。 バックアップに時間がかかる、バックアップそのものが完了できないなどの問題が相次 ぎ、担当者はトラブル対応に追われることになった。この時期、1年で300 時間がバッ クアップおよび同社の統合仮想基盤の機器のトラブル対応に費やされたという。
Veeam のソリューション導入のきっかけは、2017 年に石野氏がVeeamON FORUM に参加したところから始まる。Veeam は子細にわたる技術的な発表を行っていた。「ユー スケースなども現場寄りの技術的な内容で、とても納得感があった」(石野氏)。
千代田化工建設では部門により複数の他社製バックアップソフトウェアを利用してい た。そこにVeeam という新たな製品の追加承認を受けることは容易ではなかったが、 POC(Proof of Concept)を実施したそのパフォーマンス結果を見て、採用はスムー ズに認められた。その他、シンプルで使いやすいインターフェースであること、サポー ト体制やOracle のRecovery Manager (RMAN) 対応といった条件をクリアしている ことも評価し、2018 年11 月、まず社内でも重要なシステムの一つである勤怠管理シ ステムのシステム・勤怠データバックアップにVeeam Availability Suite Enterprise Plus を採用した。運用開始以降、問題は起きていないという。
今後同社は、バックアップのアーキテクチャの改変も検討していく。現状、同社はテー プへのバックアップを月あたり20 ~ 30 本行っているが、それを行う工数に加え、メディ アや保管場所にもコストがかかる。クラウドのオブジェクトストレージを活用する構想 はあるが、それについても「Veeam が最近アップデートしたCloud Tier の機能でサポー トされる、オブジェクトストレージへのアーカイブも考えていきたい」と石野氏は語る。
大規模プラントの建設事業は、プロジェクトベースのビジネスになる。しかし、プロジェ クトが決まる度、将来必要となるIT リソースを見越してオンプレミスで用意するのは非 効率な面が大きい。プロジェクトごとにある特定の期間のデータやワークロードを管理 していく同社のビジネスには、ハイブリッドクラウド化が向いている。オンプレミスと クラウドでデータやワークロードを苦労なく行き来できるのが理想的であり、「Veeam が対応を打ち出しているマルチクラウドでのサポートは、当社のIT 戦略の方向性にも合 致する。オンプレミスやクラウドをまたがった統合バックアップ基盤の形成に向けて、 今後もVeeam 社の展開に注目していきたい」(石野氏)と語った。
千代田化工建設株式会社は、1948 年に創 業。石油精製、液化天然ガス(LNG)、シェー ルガス、太陽光発電などのエネルギー分野 から、化学、環境、省エネ、産業設備、ラ イフサイエンスにいたる幅広い分野にお いて、大規模プラントの設計、調達、建 設(EPC:Engineering, Procurement, Construction)業務で、数多くのプロジェ クトを世界各地で手掛けている。
大規模環境を抱える同社では、複数のメー カーのバックアップソフトウェアを使用し ていたが、バックアップ基盤のサイロ化に よる運用の非効率化、およびバックアップ の取得そのものに時間がかかるなど複数の 課題が発生しており、統合バックアップ基 盤の構築が急務であった。