仮想化基盤を活用してシステムを構築する企業が増えています。一台の物理サーバーで複数のVM(仮想マシン)を動作させることができるため、物理サーバーの台数を抑えられ、運用負荷を軽減できるほか、たとえばテスト環境を短時間で構築できるなどのメリットが得られます。
JX金属でも以前から仮想環境を採用し、磯原地区(茨城県北茨城市)、日立地区(茨城県日立市)、倉見工場(神奈川県寒川町)、佐賀関製錬所(大分県大分市)などの各事業所のサーバー、およびメインとサブのデータセンターのほとんどをVMwareのvSphereを用いて運用してきました。
同社は2024年に二つの課題に直面しました。ひとつは、仮想環境を支えていたHCI(ハイパーコンバージドインフラ)を含む物理サーバーが2024年8月に保守期間を満了することです。これに伴い、ハードウェアの更新が必要になりました。
もうひとつはVMwareのライセンス体系の変更です。VMwareを買収したBroadcomが、従来の永続ライセンスを廃止してサブスクリプション型への移行し、かつ、課金単位を物理CPUソケットから物理CPUコアに変更することを2024年2月に発表したためです。
「VMwareのライセンス体系の変更によって、運用コストの上昇や将来の調達・保守の不確実性が新たなリスクとして浮上しました。そこで、サーバーハードウェアの更新と合わせて、VMware以外の仮想化基盤への切り替えを本格的に検討することにしました」と、JX金属 技術本部情報システム部の佐野隆次氏は説明します。
サーバーハードウェアと仮想化基盤の更改にあたっては、単なるリプレースにとどまらず、将来を見据えて、運用コストの抑制、性能向上、セキュリティ強化などを方針として定めました。ただし仮想化基盤を変更した場合、移行に時間がかかると業務へ影響が生じる可能性があります。
「VMware vSphere上の各VMを、停止時間を可能な限り抑えつつ新しい基盤へ移行する必要がありました」と佐野氏は当時を振り返ります。
仮想化基盤に関しては、それまで使っていたVMware vSphereをやめて、新たにMicrosoft Hyper-Vを採用することにしました。「他の仮想化基盤も検討した中で、Hyper-VはMicrosoft Windows Serverに標準で搭載されていることもあり、Microsoft Windows Serverで培ったスキルや運用ノウハウをそのまま生かせると考えました。また、将来的にライセンス体系が変更された場合でもコストの見通しが立てやすく、サポートも安定して受けられると判断したためです」と、佐野氏は採用理由を説明します。
合わせて、VMの移行にはVeeam Data Platformのクロスハイパーバイザーリストア機能を活用し、新環境でのバックアップ基盤としてもVeeam Data Platformを導入しました。佐野氏はこう説明します。「Veeam Data Platformは、“異種ハイパーバイザー可搬性”とでも言うべき特長を備えていることや、新たに採用したMicrosoft Hyper-Vとの親和性も高いことから、採用を決めました」。
従来はVMware環境でvSphere Replicationを利用してVMの保護を行っていましたが、Microsoft Hyper-Vを用いた新環境ではVeeam Data Platformでバックアップ運用を行っています。バックアップとリストアをVeeam Data Platformに統一したことで、将来的に異なる仮想化基盤への移行が発生した場合や、オンプレミスに加えてクラウド連携が必要になった場合にも柔軟に対応できる基盤となりました。
佐野氏はVeeam Data Platformの使い勝手を次のように評価しています。「運用チームからは、表示は英語ではあるものの画面構成が直観的で操作しやすい、といったコメントをもらっています」。なおVeeamでは、ウェブブラウザから操作する機能をバージョン13から実装する予定であり、また、日本語化も順次進めています。
次のステップとしてJX金属が検討しているのがランサムウェア対策の強化です。まずは、バックアップデータの書き換えを不可能にするVeeamの「強化Linuxリポジトリ」機能の検討を進めていると佐野氏は述べています。この機能は、Linuxベースで別途構築したリポジトリサーバー(物理またはVM)上に、書き換え不可の領域を構成することでランサムウェアの暗号化操作からデータを保護するものです。また、オフサイト(オフライン)ストレージとの組み合わせによる「3-2-1ルール」の徹底や、Veeamが提供するセキュアリストアやマルウェア検知などのセキュリティ機能も検討していく考えです。