クィックロールバック

Veeam Backup & Replicationには、インスタントVMリカバリ、VM全体または単一のファイルの復元、およびアプリケーションアイテムの復元などの多数の復元オプションが用意されており、 復元に関するさまざまな問題を解決するのに最適なソリューションです。

仮想ディスクの復元を実行すると、インスタントVMリカバリを使用するかどうかにかかわらず、最終的に、仮想ディスク全体がバックアップストレージから本番環境のストレージに完全にコピーされます。インスタントVMリカバリを使用する場合、これは問題ではありません。仮想マシンがすでに実行しているときに、バックグラウンドで移行が発生したとします。しかし、VMの復元直後に、完全なI/O容量が必要だとしたらどうなるでしょう。

Backup & Replication v8では、クィックロールバック機能によってこれを実現することができます。クィックロールバックは、VM全体またはVMのハードディスクを元の場所に復元する際に選択することができ、 増分復元を実行します。Veeam Backup & Replicationは、仮想ディスク全体を復元する代わりに、必要なブロックだけを復元して、VMを、選択された復元ポイントに保存されている状態に戻します。最後のバックアップ以降に変更されたブロックだけがコピーされます。このため、復元時間が大幅に短縮されます。

変更されたブロックを識別するために、Veeam Backup & Replicationは、増分バックアップの実行に使用されるCBT(Change Block Tracking)テクノロジと同一のテクノロジを使用します。VMwareの場合、Veeam Backup & Replicationは、vSphere APIに対してクエリを実行することで、この情報を取得します。Hyper-Vの場合は、同じ情報を、Veeam独自のCBTエンジンに対してクエリを実行することにより取得します。Veeam Backup & Replicationは、変更された仮想ディスクブロックのリストも、これと同様に取得し、 このリストにより、最後のバックアップ以降に変更され、仮想ディスクに復元しなければならないデータブロックを認識します。

この機能には、多数の用途があります。最も実用的な例の1つは、トロイの木馬に感染した仮想デスクトップからマルウェアを除去する代わりに、クィックロールバックを使用する場合です。復元は数秒で完了しました。

コンソールでは、例えば、仮想マシン全体の復元を開始することができます。ウィザードの[Restore Mode (復元モード)]ステップで、デフォルトの[Restore to the original location (元の位置への復元)]オプションを選択した場合、[Quick rollback (クィックロールバック)]チェックボックスをオンにするだけでクィックロールバックを実行することができます。

ウィザードは、元のVMをシャットダウンし、変更されたブロックだけの復元を開始します。通常のVM全体の復元 (左側) と比較すると、クィックロールバックの利点がひと目でおわかりいただけると思います。

実際に使用されているのは、20GBのVMDKディスクのうち2.2GBです。VM全体の復元では、2.2GBすべてを68秒で復元しました。一方、クィックロールバックは、29MBだけを12秒で復元しました。当然ながら、複数TBの仮想ディスクを使用する本番VMでは、この差がはるかに大きくなります。

前述のとおり、クィックロールバックは、CBT情報を使用します。 ただし、多くの災害シナリオでは、CBTデータに依存することはできません。このため、デフォルトでは、このオプションを無効にしています。クィックロールバックは、VMのゲストOSレベルで問題が発生した後にVMを復元する場合に限り使用すべきです。 問題が、ホストやストレージハードウェアの問題または電源障害に起因する場合、[Quick rollback (クィックロールバック)]オプションを使用しないでください。 このような場合、CBTデータが破損している可能性があり、誤ったブロックを復元したり、仮想マシンのディスクが完全に破損したりする危険性があります。

最後に、クィックロールバックには、いくつかの制限があります。第一に、増分復元を2回続けて実行することはできません。最初の増分復元を実行すると、元のVMのCBTはリセットされます。 増分バックアップを少なくとも1回実行しなければ、増分復元を再度実行することはできません。第二に、VMware環境では、転送モードがネットワークまたは仮想アプライアンスの場合のみ増分復元を実行することができます。この種の復元では、Direct SAN Access転送モードを使用することはできません。

しかしながら、いくつかの制限があるものの、クィックロールバックが非常に役立つ機能であることは確かです。

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