日本がかつてない高齢化社会に突入しつつある中、介護や認知症治療といった社 会的ニーズを先取りしてユニークな保険商品を提供している太陽生命保険。よりよ い商品やサービスを開発し、素早く顧客に提供できる原動力の1つが、ITを積極的 に活用した業務改革だ。
太陽生命保険のIT企画部 部長 池田睦氏が「人や制度の面だけでなく、ITをうまく 使ってより付加価値の高い商品やサービスを作り、競争力を高めていくことを経営 層も意識しています」と語るように、同社はITインフラの構築・運用を担うT&D情報 システムとともに、業務効率化や顧客満足度向上を支援するさまざまなテクノロジ ーを採用してきた。
その一例が、業界に先駆けての仮想化技術の導入だ。2000年代前半、サーバー の性能向上にともなって、CPUをはじめとするサーバーリソースの利用率に「余裕」 が出始めた。これをフル活用できないかと考えた池田氏らは、業務利用には時期尚 早というイメージの強かった仮想化技術に着目。金融・保険業界はもちろん、全業 界を見渡してもごく早い時期にVMwareをまず基幹システム以外の領域で導入した。
しかし、仮想基盤の運用に常につきまとってきた悩みが1つあった。システムのバッ クアップだ。「仮想化によって、物理サーバーに障害が発生した際でも可用性を維 持できるようになり、運用のレベルは一段上がっていました」(T&D情報システム テ クニカルサポート一部 IT基盤管理一課 マネージャー 谷口暢哉氏)。だがそれでも、 万一に備えたバックアップは不可欠だ。
太陽生命保険では当初、VMwareが提供する「VMware Data Recovery」やサードパ ーティ製ツールを活用してシステムやデータのバックアップを行っていた。だが仮 想基盤が安定して動作することが分かって適用範囲が広がり、仮想マシン数が数 十台規模に増加すると、バックアップにかかる時間が長引くだけでなく、徐々に動 作が不安定になってきたという。
「バッチ処理との兼ね合いもあり、夜中から始業時間前までにバックアップを取らな ければなりませんが、容量の大きいサーバーでは時間がギリギリまでかかることも ありました。また、1台だけでなく複数の仮想サーバーを並行して取ろうとすると、さ らにパフォーマンスが落ちるという問題に直面していました」(T&D情報システムテ クニカルサポート一部 IT基盤管理一課 五十嵐裕二氏)。
いち早く全社的な仮想基盤を実現したがゆえに、いち早く新たな問題に直面するこ とになった太陽生命保険とT&D情報システムでは、バックアップ・システムの改善を 2012年の年間計画に組み込んで自力で情報収集を開始した。そこで巡り会ったの がVeeamのアヴェイラビリティソリューションだった。
「仮想基盤の拡大に伴ってバックアップにまつわる課題が浮上してきまし た。VMware Data Recoveryと同じような仕組みでバックアップを取得できるソリュー ションがないかと探し、見つけたのがVeeamでした」(T&D情報システム テクニカル サポート一部 IT基盤管理一課 居林直樹氏)。
重視したポイントの1つは、仮想化、VMwareを前提にしたツールということだ。「せっ かく仮想化しているのだから、そのメリットを最大限に生かしたいと考えました。仮想 化を前提とした製品ならば、ちょっとした部分の最適化にも差が出るでしょうし、逆に 仮想の世界では不要な、余計な機能もないと考えました」(谷口氏)。
とはいえ、過去採用してきたツールのように、規模の拡大に伴って不安定になって は意味がない。そこでT&D情報システムではさまざまな条件下でのバックアップを 想定して事前検証を重ねたが、結果は上々だったという。
「最初のテストで約40GBのデータをバックアップしたら10分の1ほどのサイズになっ てしまい、本当に大丈夫かと驚きました」(谷口氏)、「バックアップ取得時間も数十 分単位と、これまでに比べ非常に短かったので、何度も取得してはリストアして、デ ータが壊れていないか、きちんと動作するか確かめましたが、全く問題なく、安心し て使えると確信しました」(五十嵐氏)。
VMwareのバックアップの仕組みに対応し、インスタント・リカバリなど、「仮想環境向 けの、かゆいところに手の届く機能が多数あった」(谷口氏)ことも評価し、採用を決 定。2014年3月から全国143の支社で「Veeam Backup & Replication Enterprise」の導 入を開始した。
1893年に創業した太陽生命保険は、 高品質の商品・サービスを通じて人 と社会に貢献するというビジョンを掲 げ、一般の家庭市場で強い支持を 獲得してきました。また2004年から は、大同生命およびT&Dフィナンシ ャル生命とともに、T&D保険グルー プとして歩み始めています。それと 相前後して、高齢化社会の到来や 社会ニーズの変化を踏まえ、主力を 「貯蓄性」の商品から「保障性」の商 品へとシフトし、新たな市場を開拓し てきました。契約加入手続きのペー パーレス化・キャッシュレス化を含む カスタマーサポートの向上にも積極 的に取り組んでいます。内勤職員数 約2,500名、営業職員約8,900名。
ITを活用し、付加価値の高い新規 サービスをいち早く実現するため VMwareを導入し、バックアップのた めVMwareのツールや商用ソフトウェ アを採用したが、仮想環境が増えて いくにつれ、バックアップ時間の増大 や処理が不安定になるという問題が 発生した。バックアップ設計もシステ ムごとにばらばらで、「迅速にリソー スを用意できる」という仮想環境なら ではのメリットを十分に享受できない 状態だった。