私学の雄であり、また近年は日本のインターネット技術を牽引する存在でもある慶 應義塾。ITを駆使した教育や研究活動も盛んで、学生や教員の多様なニーズに合 わせて構築された各キャンパスで、数千台もの端末が活用されています。
これらタイプの異なるキャンパスやネットワークをつなぐインフラを管理・運用して いるのが、インフォメーションテクノロジーセンターです。6つの主要キャンパスに加 え、一貫教育校やサテライトキャンパスのインフラ運用も支援しています。
ITC本部で数年にわたりシステム調達、運用に携わってきた宮本靖生氏は「大事な のは、サービスを提供し続けることです。そのためにも、万が一に備えたバックアッ プやレプリケーションといったデータ保護の仕組みは欠かせません」と述べていま す。効率的なバックアップと迅速なリストアを実現できなければ、認証基盤を含めた 多くのサービスに影響が及ぶことも想定され、円滑な授業運営、研究活動にも支障 が生じかねません。そんな視点から慶應義塾ではVeeam Softwareのバックアップお よびアベイラビリティを提供する「Veeam Backup&Replication」を採用し、基盤の安 定運用を実現しました。
慶應義塾では現行システムの2世代前に当たる2009年頃からVMwareを用いた仮 想基盤を採用し、ハードウェアを集約し始めました。インフラである以上、バックアッ プや災害に備えたレプリケーション機能は必須ですが、当初採用した商用ソリュー ションでは「日付が変わってもバックアップが終わらないほど時間がかかりすぎまし た。 その結果実運用に耐えないと判断し、仕方なくAPIを用いた独自のスクリプトを 作成し、運用していました」と宮本氏は振り返ります。
ですが、バックアップのためだけに貴重な人手を張り付けておくわけにもいきませ ん。こうした背景から4年おきに実施していたリプレースに合わせて採用したのが Veeam Backup&Replicationでした。
宮本氏は率直に「Veeam Softwareをご紹介いただいた際は、初めて伺った名前だ ったことと、以前導入したバックアップ・ソリューションと比較し、非常に魅力的なコ ストだったこともあり、『本当にちゃんと動くのだろうか』と心配していましたが、ご紹 介いただく中で、安心して採用できる、大変すばらしい製品だと感じるようになりま した」と述べています。
インフォメーションテクノロジーセンターでは、アウトソースで全て丸投げするのでは なく、「システムの企画、調達から廃棄するところまで自分たちでやる」というコンセ プトで運用に取り組んでいます。自分たちで責任を持って運用するからこそ、RFP では数十に及ぶ機能や仕様を必須要件として求めています。Veeam Backup & Replicationはそうした要件を全てクリアしました。
こうして慶應義塾では2013年にVeeam Backup&Replicationを導入しました。その 後4年間に渡り安定稼動した実績を評価し、2017年夏に行った仮想化基盤のリプ レース時にも引き続きVeeam Backup&Replicationを採用。スケールアウトが容易 なハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(HCI)のアベイラビリティ・ソリューショ ンとして活用しています。「他社の製品にもいい機能はいろいろありましたが、検討 の結果、やはりVeeamが一番いいという結論に至りました」(宮本氏)
2017年の導入時の作業は、直前にディザスタリカバリ拠点の構築を支援した兼松 エレクトロニクスがサポートしました。「非常に優秀なチームで対応いただき、満足 しています」(宮本氏)。何かあるたびに「持ち帰って検討します」と待たされるので はなく、設定に関する細かな質問や要望にその場で的確な情報を返してくれる技 術力を大いに評価しているそうです。
既存環境からの移行作業もほぼ無停止で実現し、今ではそれぞれの拠点内およ び拠点間でバックアップを取得して運用しています。HCIとも親和性が高く「スケー ルアウトした分を勝手にバックアップ対象に入れてくれるため、非常に効率的な運 用を実現できています」と宮本氏は高く評価しています。
IT環境が劇的に変化する中、ITC本部では従来通りのオンプレミスへのバックアッ プだけでなく、クラウド上へのバックアップといった選択肢も検討しました。議論の 中では「HCIを導入するのだからいっそバックアップ自体不要では」というアグレッシ ブな意見もあったそうです。ただ「何らかの形でオンプレミスに残るシステムはあり ます。それを保護してサービスを継続させ、不測の事態に備える環境は不可欠で す」と宮本氏は述べています。
慶應義塾では今後、今回刷新した仮想基盤上にまだ統合できていないシステ ムも段階的に統合する計画ですが、そのデータ保護としてもVeeam Backup & Replicationを活用する方針です。またIT業界全体の動向を見ながら、クラウド基盤 との連携やクラウド上へのレプリケーションといった取り組みも視野に入れていま す。その意味で、「Veeam Cloud Data Management」で規模を問わず、また仮想、物理、 クラウドベースを問わずにワークロードのアベイラビリティを実現するVeeamのアベ イラビリティ・ソリューションに、今後も期待しているといいます。
慶應義塾は、1858年に福澤諭吉が 江戸に開いた蘭学塾をはじまりとす る、小学校から大学・大学院までを 擁する日本最古の私立総合学塾の 1つです。首都圏6キャンパス10学部 で3万3,500人を超える学生が、約 2,700人に上る教職員とともに福沢 諭吉の掲げた「実学の精神」を受け 継ぎ、学術的、国際的な教育、研究 に取り組んでいます。その中でITC (インフォメーションテクノロジーセン ター)は、デジタル社会における情報 技術の導入・活用を推進するため情 報システム環境を整備。約10名のス タッフが所属するITC本部をはじめ、 円滑で安全なコミュニケーションを支 援する環境・サービスを提供してい ます。
VMware社の製品を用いた仮想基盤 のバックアップのため商用ソフトウェ アを導入したが、実運用に耐えず、 やむを得ず担当者が作成したスクリ プトを用いてバックアップを取得して いた。このため、万が一基盤のトラ ブルや操作ミスで必要なデータが破 損・消失した場合でも、ファイル単位 のリストア等には対応できなかった。