近鉄グループホールディングス(以下、近鉄GHD)は、近畿日本鉄道を主体とする運輸事業を始め、不動産、流通、ホテル、観光・レジャーなどの事業に携わる150近くの会社で構成される近鉄グループの持ち株会社として発足した。また、近鉄情報システムは、近鉄グループのITパートナーとして、鉄道業務を支える各種システムや、基幹系システム、Web系/オープン系のシステムの企画・設計・開発・保守・運用をトータルに受け持っている。
近鉄GHDでは、グループ各社のオンプレミス環境を、パブリッククラウドへ全面移管するための大規模プロジェクトを現在遂行中だ。その背景には、大きく2つの課題があった。1つは、DX(デジタルトランスフォーメーション)シフトによるビジネスプロセス全体の改革。近鉄GHD 総合企画部 課長 伊東 剛志氏は次のように説明する。「近年、当社グループを取り巻く事業環境や社会構造が大きく変化し、近鉄グループでもDX化の必要性を強く感じるようになりました。そのためには、既存の業務プロセスの見直しや、グループ全体の業務や基盤の標準化などが必須で、システムの柔軟な展開や、コストのかからない安定的なシステム運営を可能にする、クラウドファーストへの体質転換が必要だと考えました」
もう1つは、BCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)対策の強化。近畿日本鉄道の特急は大阪・奈良・京都・三重・愛知に跨がる私鉄最長の営業距離を持ち、全路線の1日の利用者数は約150万人にも及ぶ。南海トラフ巨大地震など強い地震が発生しても、被災を免れた地域の鉄道は可能な限り運行させるという社会的責任を全うするため、近鉄GHDではクラウド化を強く促進している。
しかしそこで障害となったのが、ビジネスデータのサイロ化と散逸的な運用だった。近鉄情報システムでは、新たなシステムを構築する度にベンダーが用意したバックアップソリューションを導入してきたため、システムごとにバックアップツールが乱立。異なる運用フローに大きな負担がかかるとともに、構成変更する場合もベンダー依存の状況が続いていたという。近鉄情報システム 技術管理部 技術管理部長 上種 義之氏は、「そうした反省から、今後はデータマネジメントの主導権を取り戻す方針で、統一と一元管理を進め、自前運用に切り替える決断をしました」と振り返る。
同社のクラウド化の方針を受け、現在のオンプレミス環境とパブリッククラウドの混在環境においても、一元的にデータ保護やマネジメントをできるツールが求められていた。さらに、内製化を推し進めていく上で、分かりやすく自分たちで使いこなせるツールが求められていた。複数の製品を比較検討した結果、選択したのが「Veeam Backup & Replication」(以下、Veeam)だった。
選定の理由について、近鉄情報システム 技術管理部 渡邊 航平氏は、「現状はある意味ハイブリッドクラウド環境ですが、オンプレミスでもクラウドでも同じ運用フローが適用可能な柔軟性の高さに注目しました」と話す。また、Veeamは業務に必要な機能がほぼ全て揃った状態で提供されるため、機能を追加したり高額なオプションを積み上げたりする必要がなく、トータルコストを抑制できる可能性も感じたという。「ヴィーム・ソフトウェアの営業や技術担当者から親身なサポートを受けたり、ハンズオントレーニングに参加したりすることで、Veeam自体が非常に簡単で使いやすく、自分たちでマネージしていける自信を持てたことも選定の理由になりました」と渡邊氏は述べる。
今後、近鉄グループのIT環境は近鉄情報システムが集約して管理する方向にあるため、Veeamの活用範囲は劇的に広まっていくことが予想される。伊東氏は、「近鉄グループ内での連携や事業横断ビジネスなどグループシナジーが加速し、グループのデータが集約するようになれば、データの迅速なバックアップとリストアは必須の要件になってきます。Veeam導入は事業継続のロバストネス(頑強性)を補完するだけではなく、近鉄グループの今後の成長のためにも必要な基盤であると考えています。」と語る。
近鉄GHDと近鉄情報システムがめざすクラウドファーストのビジネスイノベーションはVeeamによって着実に加速していく。
大阪・奈良・京都・三重・愛知を結ぶ路線距離私鉄日本一の鉄道とバス・タクシーなどを担う運輸事業、「あべのハルカス」に代表される商業施設や住宅の企画・開発・運営する不動産事業、近鉄百貨店・駅ナカ・食 品スーパーを展開する流通事業、都ホテルズ&リゾーツなど23のホテル・旅館を展開するホテル事業、「志摩スペイン村」など各種エンターテインメントを提供する観光・レジャー事業など、生活総合サービス事業を幅広く展開。“「いつも」を支え、「いつも以上」を創ります。”を経営理念とし、人々の暮らしに新たな喜びと豊かさを提供している。
オンプレミスからパブリッククラウドへ全面移管するプロジェクトを進める中、ビジネスデータのサイロ化とバックアップの散逸的な運用が障害となり、運用負担の増大とベンダーロックインによる非効率さが大きな問題となっていた。今後はバックアップを一元化し、システムの内製化や自前での運用に切 り替える必要があった。